無口な王子様
「ところで、皆はもう来年には社会人よね?」

有紀さんが私達一人一人の顔を見た。

「亜由美はバイトだけどね。でも、頑張ってカリスマ販売員になんの!」

「私はアニメ関係の専門学校に決まりました。声優になりたくて。」

亜由美も優奈も自分の将来をしっかり見てるんだな。
私は………

「凜ちゃんは?」

私は………

「何も。まだ何も考えてないんです。」

私にはまだ何も見えない。

あの日消えた夢は形も変えずにそのままになっている。

「だったら、今から沢山の可能性があるのね。凜ちゃんがどんな道を見つけるか楽しみだわ。」

こんな自分に引け目を感じていたけど、その有紀さんの笑顔は、とても心強かった。

私の情けない答えに、驚いたり責めたりしなかったのは有紀さんだけだ。

「ありがとうございます!見てて下さいね!」

何か見つけたり迷った時には、有紀さんに話そう。

きっと私の道標になってくれるだろう。

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