無口な王子様
そうぼんやり考えながら歩いていると、もうソワレが見えてきた。

その時、

「凛!!!」

背後から叫び声がした。亜由美の声だ。

私が振り返ると

「やっほぉぉ!」
亜由美が大きく手を振りながら走ってきた。
想像以上に、亜由美は気合いを入れてきていた。
あの時買ったワンピースに、ニットのロングカーデガンを羽織って、ヒールの高いブーツという服装だ。
今日は一段とまつげが長い。
いくら私がマスカラを塗りたくってもこうはならないだろう。

「メリークリスマス!」
「メリクリー!」
亜由美は、私の隣に並んで手に持った紙袋を掲げた。

「じゃーん!ちょっといい感じじゃない?」

「綺麗にラッピングしたねー。でも、私だって負けてないよ!」

私も紙袋を突き出す。

「凛、やるじゃん!間に合ってよかったね!」

「うん。コタツで寝ちゃってたけどね。」
「マジで?亜由美もよくやるけど、後が大変な事になるんだよねー。」

私達は、他愛もない会話をしながらソワレの前まで来た。

その瞬間、私は忘れていた昨日の違和感をまた感じて立ち止まった。
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