無口な王子様
「どうしたの?」

亜由美が私の顔を覗き込む。

「……なんか、……なんか変じゃない?」

私は、周りを見渡した。

いつもと変わらない、片側車線の細い道路。

店の前の花壇の花も特に変わりはない。

「え??なんか、昨日もそんな事言ってたよね?」
「ううん。なんか、昨日とは違う……何かがはっきり違う。」

何が違うんだろう。

私は落ち着かない気分になった。

「マジで?全然わかんないけど。」

亜由美も、私の様子に不安になったのかしきりにキョロキョロとする。

すると、

「凛!ちょっと!」

亜由美が、店の扉を指差した。

そこには

CLOSED

の札がかかっていた。

その時、私はその違和感の正体がはっきりと分かった。


辺りの空気にコーヒーの香りがないのだ。
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