無口な王子様
「あなた達……。」
私達が、扉の前で立ちすくんでいると、女性の声がした。
「何か御用かしら?」
そこには、見覚えのある女性が不思議そうな顔で私達を見ていた。
「あの……亜由…私達、今日ここに来ることになってたんです。」
震えが止まらない私の代わりに、亜由美がそう答えてくれた。
「あぁ。あなた達なの。お話は聞いているわ。」
その顔は、以前にここで見た顔だった。
有紀さんと話をしていた人だ。
「ちょっとまってね。今、あけるから。」
女性は、コートのポケットから鍵を取り出すと私達の間を通って、扉の鍵を開けた。
「あの……有紀さんは?」
亜由美がそう言うと、
「中でお話しましょう?外じゃ寒いわ。」
と、優しく私達の背中を押した。