無口な王子様
「少し待ってね。今電気をつけるから。」
電気も付いていず、有紀さんのいない店内は妙にガランとした印象だった。
私と亜由美は落ち着かない気持ちで、いつもの窓際の席に腰掛けた。
電気がついたところで、扉の鐘の音が響いた。
有紀さんでありますように、と見ると、そこにはピンクのトランクを下げた優奈がいた。
優奈は、一瞬でこのおかしな状況に気付いて私達に駆け寄った。
「どうしたの?なんかあった?」
「わかんない。」
亜由美は首を横に振る。
「こんにちは。」
そこに、なにやら大きな封筒を抱えた女性が戻ってきた。
「こんにちは。」
見知らぬ相手に、優奈は戸惑いながらも丁寧に頭を下げた。
「さぁ。あなたも、掛けてちょうだい。」
優奈は、もう一度頭を下げると私の前に座った。