無口な王子様
私は並んでいる人形に、目が釘付けになった。
外国の子供の様な顔と、お姫様みたいな美しい服。
子供の為の人形とは違うのが分かる。
その時、
「いらっしゃい。」
柔らかい女性の声がした。
私は慌てて、人形から目を離す。
「どうぞ、空いてる席にお掛けになって。」
声の主は、カウンターの隅に置いてあるレジの後ろから顔を覗かせていた。
その女性はおばあちゃんよりちょっと若いくらいで、上品な顔立ちをしていた。
私はぎこちない笑顔を浮かべて、軽く会釈する。
空いてる席といっても、お客さんは一人もいない。
少し迷った末、窓際の席に座ることにした。