無口な王子様
あの時、私が引き返していればもしかしたら……

少しでも有希さんが助かる確率が上がっていたのかもしれない。


そう思うと、悔やんでも悔やみきれない。

今考えてみれば、ケーキの仕込みなんて私達がいたって出来るんだ。

なのに、有希さんは私達を帰した。

いつもは、一緒に座ってコーヒーを飲んだりしないし、外に見送りにも来ない。

ちょっとした違和感なんかではなく、有希さんの態度は明らかに不自然だった。

それに気付きかけていたのに……私は……


私は自分を責める事しか出来なかった。
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