無口な王子様
慶太はずっと、一人ぼっちで有紀さんの帰りを待ち続けないといけなくなるの?

そんなの、あまりにも酷だ。
有紀さんや、私達から見たら大切な人なのに、他人から見れば所詮人形。
そうなっても仕方のないことだ。

でも、私にはそんな事は出来ない。
再び私の目には涙があふれた。


すると、洋子さんは、私達の前に置かれた封筒を指差した。

「開けてみてくれるかしら?」

「え??」

優奈がハンカチを握り締めたまま、洋子さんを見た。

「姉さんの預かっていたの。あなた達に渡すように。」

それは、本当のごくごく一般的な茶封筒だった。

3人それぞれに一通づつ。

手に取って裏返してみると

『凛ちゃんへ』

と、達筆な字で書かれてあった。

有紀さんの字を見るのはこれが初めてだった。

でも、その字は有紀さんの人柄全てが表れているような気がした。
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