無口な王子様
有紀さんの気持ちが詰まった手紙に、言葉が出なかった。
有紀さんはこんなにも私を見てくれていたんだ。
こんなに大切に想ってくれていたんだ。
そう思うと、また涙が出た。

いつも私がこうして泣いていると背中をさすってくれた有希さん。

あの温かい手にもう一度触れてもらたいたいよ。


亜由美の方を見ると、亜由美は手を震わせていた。

「……有紀さん……」

亜由美の手紙の内容は分からないけれど、きっとそこにも沢山の愛情が込められていたのだろう。
有紀さんにとっても、慶太にとっても、亜由美は太陽のような存在だったに違いない。

それでも、有紀さんと慶太は私を選んだ。

どうしてなのか分からないけれど、亜由美じゃなく私なんだ。

今、亜由美に伝えるのはつらかった。

でも、どうしても私の口から伝えなくてはならない。
そんな気がした。


まっすぐ前を見る事、それはきっとそういうことなんだ。

私は、隣に座っている亜由美の手を握った。

きっと亜由美も分かってくれるだろう。
約束した通り、変わらず友達でいてくれる。

「あのね、亜由美……。」


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