無口な王子様
「その苦しみから解放してくれたのが慶太だったのよ。
慶太は姉さんの子供になり、家族になってくれた。
それからは、慶太のために生きるって弱音を吐かなくなったわ。

だから、凜ちゃんが変わっていく姿を見て、自分と重ねたのね。


亜由美ちゃんの想いも姉さんは知っていたわ。
でも、あなたを選んだのは、あなたに慶太が必要だからなのよ。
自分に慶太が必要だったようにね。」


洋子さんは静かに話してくれた。


「あなたが決める事だけど、一つだけ言わせて頂戴。
もう姉さんを後悔させないで欲しいの。」


……後悔。

きっと、ここで慶太に背を向ければ、私を選んだ有希さんも私自身も後悔するだろう。

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