無口な王子様
私は、かつて好きだった人を見ても何も感じなかった。

未練も、羨望も、憎しみも。

和也が、私といたあの時のままでいたら話は違ったかもしれない。
でも、もう違うんだ。

「てか、和也ってこんな顔だっけ?こんなの、私が好きだった和也じゃないよ。」

私はそう言って、机の上の雑誌に視線を戻した。

亜弥は雑誌を自分の方に向けると、眉間にシワをよせて笑顔の和也を観察し、

「……元カノの言う事は残酷だね。」

と言って、和也のおでこをピンと弾いた。

「本当!他に好きな子が出来たらこんなもんかねー。」

恭子が面白そうに私の腕をつついた。

「ちょっと!からかわないでよ。でも、確かに慶太がいなかったら、今ごろこれ見て号泣してたかもね。
慶太に会えて良かった!」
私が笑うと、恭子が

「あーあ、私もそんなセリフ吐きたいよ。」

と、ため息をついた。
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