無口な王子様
それは、ソワレに行く度に感じる事だ。

会いたくても会えない有希さん。

会いたくても会わない亜由美。

全然違うけど、会いたいには変わりない。


有希さんの優しい笑顔と、亜由美の高い声。

思い出すだけで、胸が苦しくなる。

その夜は、久し振りに眠れなかった。

何度も有希さんの手紙を読み返して、慶太を抱き締めて泣いた。

負けちゃいけない。
真直ぐ進まなきゃ。

あれからずっと、自分に言い聞かせてきたけど、今日だけは泣きたかった。

有希さん、ごめんなさい。

悲しまないでいるなんて、出来ません。
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