無口な王子様
「卒業だぁ。」

「卒業だねぇ。」

私と優奈は空を見上げた。

旅立ちの日にふさわしい、澄んだ青空。

たった今もらったばかりの卒業証書を握り締めて、中庭のベンチに並んでそうしていると、感慨深いものがある。

「亜弥ちゃんと恭子ちゃんは?」

優奈が、顔を上に向けたまま言う。

「先生んとこ。補習でお世話になったからって。」

私も同じようにして答える。

亜弥と恭子はそれぞれが目指していた大学へ進学が決まった。

最後はヤケクソのようになっていた二人も、今や清々しい顔をしていた。


ぼんやりと、二人の合否発表の日のあの笑顔を思い出していると、

「凜!手紙!」

突然、優奈が私の腕を揺すった。
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