無口な王子様
「手紙?!」
「そうだよ!亜由美ちゃんと約束した!」

優奈が、少し先にある大きな木を指差した。

「………あ!」

私はそれを見て、立ち上がった。

「凜!もしかしたら……」

私は、優奈の言葉を全て聞かずに駆け出した。

優奈も慌ててそれに続く。

日々の忙しさで忘れていた約束。

嬉しそうに手帳に丸を付けた亜由美。

タイムカプセルねって言っていた有希さん。

将来に不安を抱えていた優奈。

それを黙って見ていた慶太。

クリスマスを心待ちにしていた私達。


中庭をバタバタ走る私の頭には、あの時の自分達が鮮明に浮かんでいた。

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