無口な王子様
エピローグ
「お待たせしましたぁ。」
お盆にコーヒーとクッキーを乗せて居間に入ると、慶太は亜由美の膝に座っていた。
「やっぱり慶たんはいいね。」
初めは久し振りに会った慶太に戸惑っていたくせに、そんな事はなかったかのように亜由美は慶太の髪を撫でている。
「そんな事言ってたら彼氏にフラれるよ?」
「それ、ヤバイ。あいつ、ヤキモチ焼きなんだよね。」
亜由美は名残惜しそうに、慶太を元の子供用の椅子に戻した。
そして、並べられたコーヒーとクッキーを見て歓声を上げた。
「懐かしい!!この匂い!!」
カップに鼻を付けるようにして、すぅっと深呼吸する。
「ソワレに残ってた豆を頂いたの。クッキーも有希さんのレシピだよ。」
亜由美は嬉しそうにクッキーをかじった。