無口な王子様
有紀さんは、私の隣りに腰掛けてゆっくり話出した。
「私はね、夫を亡くしてから慶太しか身寄りがいなくなってしまったの。だから、慶太にも私しか身寄りがないのよ。お互い、唯一の家族。
だから、私がいなくなった時の事が心配で。
でもね、あなた達を見ていたら心配も吹き飛ぶくらいに元気になれるのよ。
それに、慶太のために一生懸命になってくれて。嬉しくて仕方がないの。
だから、私がもしいなくなった時には………
あなた達のどちらかに慶太を引き取ってもらいたくて。
もちろん、無理にとは言わないわ。
でもね、私は本当に慶太を愛してくれる人に引き取ってもらいたいと思っているの。 」
有紀さんの穏やかな口調に、私達は神妙な顔になる。
「迷惑でなければ、少し考えておいてちょうだい。」
そう言われても……
慶太がどちらかの手に渡る時が二人の別れの時だと思う。
亜由美のものになれば、きっと亜由美を恨めしく思うだろう。
それが逆だとしても、亜由美も同じはず。
慶太を大事に思うからこそ、二人の関係は崩壊してしまう。
有紀さんは、それを知って話したのだろうか。
片手に持ったままのシナモンロールが妙に間抜けに見えた。
「私はね、夫を亡くしてから慶太しか身寄りがいなくなってしまったの。だから、慶太にも私しか身寄りがないのよ。お互い、唯一の家族。
だから、私がいなくなった時の事が心配で。
でもね、あなた達を見ていたら心配も吹き飛ぶくらいに元気になれるのよ。
それに、慶太のために一生懸命になってくれて。嬉しくて仕方がないの。
だから、私がもしいなくなった時には………
あなた達のどちらかに慶太を引き取ってもらいたくて。
もちろん、無理にとは言わないわ。
でもね、私は本当に慶太を愛してくれる人に引き取ってもらいたいと思っているの。 」
有紀さんの穏やかな口調に、私達は神妙な顔になる。
「迷惑でなければ、少し考えておいてちょうだい。」
そう言われても……
慶太がどちらかの手に渡る時が二人の別れの時だと思う。
亜由美のものになれば、きっと亜由美を恨めしく思うだろう。
それが逆だとしても、亜由美も同じはず。
慶太を大事に思うからこそ、二人の関係は崩壊してしまう。
有紀さんは、それを知って話したのだろうか。
片手に持ったままのシナモンロールが妙に間抜けに見えた。