無口な王子様
コーヒーの香りに誘われて
その喫茶店はひっそりと、でも確かな存在感でそこにあった。
大通りから少し外れた細い路地にある小さな古びた喫茶店。
そこからはいつもコーヒーの香りが漂っていた。
私は、少し遠回りになるけどコーヒーの香りがする空気が好きでそこを通学路にしていた。
いつも店内は薄暗く、お客さんのいる気配はない。
なのにコーヒーの香りがしない日はこの私が知る限り1度もない。
その不思議なお店は私のお気に入りだった。