無口な王子様

翌日、予想通り亜由美は学校に来ていなかった。

私は初めて午後の授業をサボってソワレに向かった。

「こんにちは~。」

少し後ろめたい思いでソワレの扉を開けると、亜由美の笑顔とコーヒーの香りが迎えてくれた。

「凛!見て!!!」

亜由美は裁断したばかりの布をヒラヒラさせた。

「ちょっと……学校サボって何してんのよ……」

私がそう言うと

「あんたもでしょ。」

と、あっさり切替えされてしまった。

私がムッとした顔をしていると、有紀さんがコーヒーを持って来てくれた。

「喧嘩する子にはあげないわよ。チーズケーキ。」

有紀さんのチーズケーキが大好きな私は、もう何も言えなかった。
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