無口な王子様
亜由美にはやっぱり勝てないな……

私は無言でチーズケーキを口に運ぶ作業に没頭した。
周囲には、亜由美が生地を切るハサミの音だけが響いている。

私がぼんやりとそれを見ていると

「この音嫌いだな……」

と、亜由美が呟いた。

「え?」

「このハサミの音。ジャキジャキジャキって、何でも切っちゃうぞって感じで。昔映画で見た殺人鬼を思い出しちゃう。」

「へー。私には爽快な感じに聞こえるけどな。」

「……そんなもんかな。」

亜由美はまた一つ裁断を終えて、型紙の付いた生地を脇に置く。

「ねえ、亜由美。一つ聞いていい?」

「何?」

「昨日の男の子と……何話てたの?」

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