無口な王子様
「本当は、怖かったんだ。」

私達は窓際に椅子を並べて、チーズケーキの残りを食べていた。

こんな時でも何か食べれるから女の子は凄い。

「亜由美ね、アイツが初めてちゃんと付き合った彼氏なの。
サイテーな奴だったけど、それでも、亜由美にとっては特別な人。
ずっと一緒にいたいって思ってたし。３か月しか実際は付き合ってなかったんだけどね。」

亜由美はゆっくりと話す。

「あの噂が回り出した時も、アイツは関係ないって思ってたの。ってか、分かってたけど分からないフリしてたんだよね。
それくらい好きだったの。」

私は、何も言えずに亜由美の手を握った。

「アイツがやったって認めたくなかったの。亜由美が、アイツは嘘つきだって皆に言っちゃって、アイツに嫌われたくなかった。それが怖かったんだよ。」

そんなに好きだったんだね。

亜由美は、こんな経験をするにはあまりに純粋過ぎたんだね。

一瞬でも、あの噂を信じた自分が情けなかった。
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表紙・目次

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