無口な王子様
「ねえ、慶太。今年のクリスマスは有紀さんがケーキ焼いてくれるんだよ。楽しみだねぇ。」

亜由美が来るまでの束の間の幸せ。

私は慶太の手を握ったり、髪を撫でたりしながら、他愛もない話をした。

この時間がいつまでも続けばいいのに。

そう願わずにはいれなかった。

――慶太が欲しい。


そう言ったら、亜由美は怒るかな。

それとも、傷付くかな。


亜由美にとっては、私は、ただの慶太ファン。


アイドルに疑似恋愛してる女子高生のように見られているだろう。

だから亜由美の前では言えないんだ。


私は慶太の瞳をじっと見つめた。

そして、心の中で呟く。


―――ねえ、慶太。大好きだよ。
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