無口な王子様
「あぁ!!慶たん!!」

亜由美の声に私は我に帰った。

私は慌てて、握っていた慶太の手を放した。

「ミシンもあるし!」

邪魔が入った事にがっかりした反面、何も気付かれなかった事に私はホッとした。

「有紀さんが出してくれたの。慶太も、ここに連れて来てくれたんだよ。」

亜由美は寒さで赤くなったほっぺたをさらに赤くさせて、嬉しそうにしている。
「凛!頑張って仕上げよーね!」

亜由美はいつになく張り切っていた。

外では冷たい風が吹いて、この店の古い窓をガタガタいわせているけれど、私の心の中はとても暖かかった。

この気持ちで服を作れたら、きっと素晴らしいものが出来るだろう。

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