無口な王子様
私が、コートの襟と袖の仮縫いを終わらせた頃に亜由美がやってきた。

亜由美と私は、紅茶のクッキーに食べながら話題のドラマの話をした。

「ベタベタな恋愛ドラマだけど、ついつい気になって見ちゃうんだよねー。」

「だね。毎回、やっぱりね!みたいに思うんだけどね。」

最後の一口を口に放り込んだ亜由美は、

「ほんとつまんない!でも絶対来週も見ちゃう。」

と、笑ってミシンの前に移動した。

いつの間にか、先にミシンを使うのは亜由美と決まってしまっていた。

「なんか、あんな恋愛もいいよね。」

私がそう言うと、亜由美はミシンの踏むのをやめた。


「っていうか、亜由美、凛の恋愛事情しらないんですけど?」

「え??」

「亜由美の話は前したじゃん。最悪な話だったけど。凛はどうなのよ?」


私の恋愛。

慶太に出会ったことで少しづつ忘れてきていたのに。

せっかく消そうとしていたのに。

私の心にまたあの冷たい感じが戻ってきた。

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