無口な王子様
教室の前まで来た時、私の動悸はピークだった。

そういっても、朝になれば、学校はいつも通り生徒を収容して、個人の意思とは別に時間を進めていく。

私はそれに従って教室のドアを開くしかない。

ここまで来たのに回れ右をして帰ろうとすると、先生に捕まった挙げ句、有りもしない言い訳を並べるハメになるだろう。


私は出来るだけ平然とした顔で教室のドアを開けた。

そして、ぐるりと教室を見渡す。


亜弥と恭子が私に気付いてあからさまに目を逸す。

やっぱりな……。

私は何も言わずに席についた。
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