無口な王子様
亜由美は休み時間の度に私を教室から連れ出してくれ、お昼ご飯も一緒に食べてくれた。

私をちょっとでも笑わせようと、嘘か本当か分からないような話をしてくれたりもした。

けど、教室に帰ると私はまた一人ぼっちだった。

私はただただ、慶太との空想の会話をして過ごした。

―――慶太……何も言わないでいるのがこんなに辛いとは思わなかったよ。


私の言葉に慶太は優しい笑顔で答えてくれる。

でも、

―――大丈夫だよ。いつか、また解り合える時が来るから。


何度問い掛けても、返ってくる返事はそれだけだった。

大丈夫


大丈夫


それは慶太の声を借りた自己暗示だった。
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