無口な王子様
そうやって長い長い一日をやり過ごした私は、授業が終わると誰より早く教室を出た。


一秒でもいいから早く慶太に会いたい。


廊下ですれ違った先生が私を呼び止めたけど、お構いなしだ。

学校の外に出ても、私は走り続けた。

点在するクリスマスツリーや、腕を絡めて歩くカップルが凄い早さで視界から消える。

冷たい風が吹いて耳を冷たくしても、肺が痛くても、そんなのどうでもいい。


………慶太、会いたいよ。

………私の心を溶かしてよ。


私は何かに追われて逃げるようにして、ソワレに向かった。


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