無口な王子様
私は何も見ない様にして、ソワレの扉だけを目指して走った。


息が上がって、お腹も痛い。

ソワレの前に着いた時は、フラフラと足がもつれ始めていた。


私は、乱暴に扉を開けた。

そして、挨拶もせずにカバンを床に投げ捨てて、慶太目掛けて突進するかのように走った。

……慶太

……慶太


私はその小さな膝にすがりつくように突っ伏して泣いた。


「なんで?!どうして!?私っ……なんであんな事……」

いきなりやってきて、突然大声で泣き叫けぶ私にさすがの有紀さんも心配したようだ。

「凛ちゃん!どうしたの?!」

慌てて駆け寄って来て、ゆっくり背中をさすってくれた。


それはお母さんの手のようだった。


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