無口な王子様
小さい子供をなだめるような優しい手に深い安心感を感じた。


「ごめんなさい………ごめんなさい……」

繰り返し謝る私に、

「いいのよ。泣ける時に泣きなさい。」

とだけ言って、私が泣きやむまで側にいてくれた。

そして、少し落ち着いたところでカウンターの向こうから何か小さな箱を取って来てから、私を椅子に座らせた。

「さぁ、凛ちゃんに魔法の薬をわけてあげる。」

そう言って開けられた箱には、一口サイズのチョコレートが行儀良く並んで入っていた。

有紀さんはそれを一粒私の口に入れてくれた。

その甘くてほんのりと苦味のあるチョコレートを、口の中で溶かしているうちに、今まであった動悸が静まってくるのが解った。


「辛い時はチョコレートが一番効くのよ。」

それは本当に魔法のようだった。
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