Libra ~揺れる乙女心~
ボールを磨く人
そんな野球しか頭にない俺が選んだ高校は、もちろん野球の名門校。
いろんな高校から推薦が来たが、俺は自分の行きたい高校を選んだ。
そこには、あいつも入学すると聞いていたから…
中学で対戦した俺のライバル。
誰にも負ける気のしなかった俺が初めて、負ける覚悟をした相手。
矢野隆介。
生意気で、俺とは正反対の性格。
滅多に笑わないし、一見怖そうだった。
何度か練習試合をするうちに、何も話していないのに俺と隆介は心が通い合った。
きっと、同じものを持ってるから…
俺も隆介も
周りから才能があると言われ、努力よりも素質を褒められた。
俺は知ってる。
試合の終わったあと、こっそり近所のグラウンドで練習していたあいつを…
俺と同じ。
誰にもわかってもらえなくても自分がわかっていればいい。
そう背中に書いてあるような気がした。
真っ暗な公園で、月明かりの下で練習する隆介を見て、俺は思ったんだ。
『こいつと同じチームで野球がしたい』って。