Libra ~揺れる乙女心~
理沙への不安は、口に出すと大したことではないような気分になった。
鈴子が、
「理紗は浮気なんてしないって」
と言ってくれた言葉をただ、信じてみようと思った。
それから、俺は理沙にいろんな話をするように心掛けた。
少しずつ距離が縮まっているような気もしたが、心の中がホッとすることはなかった。
あの合宿の夜、松の木が並ぶ旅館の中庭で俺の背中にそっと触れたあいつ。
いつの間にか、あの時の背中の温もりを思い出す俺がいた。
寂しい気持ちになると、俺は鈴子の温もりを思い出し、癒された。
この気持ちはなんだ?
健太がずっと愛している鈴子。
まぁ、別に特別な感情があるわけじゃない。
ただ、部活中、何となく鈴子の視線を意識するようになっただけ。