Libra ~揺れる乙女心~
託したボール
俺の負けだ。
俺がストレートにこだわりさえしなければ、この回を抑えられたかも知れないのに…
ピッチャー交代。
もちろん、俺の後を引き継ぐのは影のエース、矢野隆介。
背番号10。
堂々とマウンドに上がる隆介に言う。
「すまん。後は任せた。俺の気持ち、お前に託す」
隆介はただ黙ったまま頷いた。
受け取ったボールを2,3回自分のグローブへ投げ入れて、深呼吸をした。
ベンチに戻る俺にたくさんの拍手と声援。
涙は、我慢していても溢れてきた。
鈴子、俺…投げ切れなかった。
ごめんな。
回の途中での交代は不本意で、情けない。
KOされたってことだから。
この予選で初めてのことだった。
悔しさがこみ上げて、俺の目から熱いものがこぼれた。
気負いすぎていた。
鈴子にいい所を見せたかった。
どうしても甲子園に連れていきたかった。
俺の力で…