Libra ~揺れる乙女心~
お疲れ様と、肩を冷やしてくれた鈴子に、謝った。
俺は肩を冷やしながら、隆介が抑えてくれることを信じた。
「頼む…隆介」
みんなの願いを背負い、隆介は投げた。
1球目。
スライダーだったと思う。
隆介の手を離れたボールは、あっという間に、遠い場所へ飛んでいった。
外野の一番奥の席まで届いたのではないかと思うほどの、特大ホームラン。
隆介は、その方向を見つめたまま動かなかった。
振り返った隆介は、顔色を変えずに…
投げ続けた。
ランナーはいない。
隆介は、真正面からバッターを見据えて、思い切り投げ込んだ。
3球、三振。
怒涛の7回裏が終わった。
3点差をつけられた俺達は、久しぶりの感覚を味わう。
ずっと忘れていた追いかける気持ち。