Libra ~揺れる乙女心~
恋してはいけない相手
俺たちの夏が終わった。
泣いてばかりの最後の試合の後、
俺は自分の中にあるはっきりとした気持ちに気付く。
『鈴子が好きだ』
本当はずっと前から気付いていたのかも知れないけど、俺は見ないフリをした。
理沙と淳平さんが付き合っていることを知ったときの気持ちを考えると、
俺は健太に言うことなんてできなかった。
健太がずっと好きだった鈴子を、
自分も好きになってしまうなんて、自分でも情けない。
でも、俺は鈴子にこの気持ちを伝えるつもりもないし、健太にも一生言わない。
いつかこの気持ちが消えるまで、そっと自分ひとりで抱えておく。
鈴子が好き。
理沙の時とは違う。
俺の全てを知ってくれている、わかってくれる…そんな安心感と優しさに、俺は甘えたいと思った。
もし、健太の好きな相手でなかったら、俺はもっと早くこの気持ちに気付いていただろう。