Libra ~揺れる乙女心~
いきなりのキスに
私の体は硬直した。
唇を離した健太が私の頭をコツンってやるまで、私は動けないままだった。
「ごめん。キスしちゃった!」
なんて、かわいい笑顔で言う健太を私は怒るどころか、かわいいと思ってしまう。
彼氏でもないのに。
好きだけど、まだ迷ってるのに。
でも、このキスが私の恋を大きく動かすことになるって、自分でも気付いた。
それからは、花火に集中できなくて、繋がれた右手が気になって気になって仕方がなかった。
「鈴子・・・怒ってる?」
浴衣の袖の中に手を入れて、上目遣いで私を見る健太。
花火の赤のせいなのか、健太の顔は赤く染まっていた。
お尻に刺さる草も、今では気持ちいい。
「ううん・・・ びっくりしただけだよ。」
私の言葉に、健太は口を大きく開けて笑った。
「あ~良かった!!俺も自分でびっくりした!ごめんな!」
自分の心臓を抑えて、ホッとした表情をした健太。
本当は怒るべきかも知れない。
思わせぶりな女かも知れない。
健太といれば、健太が好きで
隆介といれば、隆介が好きなんて、勝手だよ。
許されるわけがない。
今は、健太を好きになれそうだと思うけど、明日部活で隆介に会えば、また私の心は揺れてしまう。
どちらともに、それぞれの魅力があって、2人とも私に必要な人なんだ。