Libra ~揺れる乙女心~
最後の花火は、空一面が真っ白になった。
まるで、昼のように明るく眩しく、興奮と感動で涙が出た。
今、この花火を隆介は彼女と見てる。
私は、健太と見てる。
こういう運命?
これが、恋愛の神様の出した答え?
花火のせいだ。
花火に感動した私は、健太の胸に抱きついた。
「健太・・・まだ揺れてるけど、それでもいいなら・・・健太と一緒にいたい。」
私は、健太と同じ人種らしい。
考えるよりも先に体が動いた。
健太の胸は、男の胸だった。
お母さんの胸とは全然違う。
分厚くて、硬くて、強くて、男の匂いがした。
私の背中に回す手が、とても優しい。
いつも、速い球を投げるこの右手がこんなにも柔らかく、優しいなんて・・・
「俺が、隆介を忘れさせてやる。」
背中に響いた声が、私の迷いを消してくれた。
健太の心臓の音がはっきりと聞こえた。
健太の胸は、居心地が良い。
子供達が走り回る足音がはるか遠くから聞こえる。
お好み焼きのソースの匂いも、火薬の匂いも
健太の匂いも・・・
夢の中のように、心地よい。
これでいい。
間違っていないはず。
誰だって、辛い恋は嫌。
楽しい恋がしたい。
これで、いいんだよね?