ありがとう。さようなら。
あれからどのくらい時間が経っただろう・・・。私はベランダにいた。
「あーいか!!何かあったの??」
私は親友の声が聞こえなかった・・・いや、自分だけの空間、自分だけの世界に入ってしまったからだ。
「ねえっ!!愛華ってば!!聞いてるの??」
私は親友の声がやっと耳に入り、やっと気がついた。
「ふぇ??な、奈菜??どうしたの??」
「あんたねぇ・・・。さっきから呼んでるのに、気がつかなかったの??」
「ごめん・・・。ちょっと、考え事してて」
奈菜ーー・・・。私の大親友。何でも言い合える、大切な友達。
「奈菜ーー・・・私・・・ね」
「ん??どうした??」
私は一回深呼吸をして、思い切って奈菜に言った。
「私、好きな人できたの!!」
それも、大きな声で。幸い、窓が閉まってたから、クラスの人には聞かれなかった。
「愛華ーー・・・。」
奈菜の目が、涙でいっぱいになった。
「奈菜??どうしたの??」
「ーー・・・たね」
泣くのを押し殺しているのか、声が詰まっていて、何を言ってるのか分からなかった。
「愛華っ!!やったね!」
「ぅわっ!」
奈菜が私に抱きついてきた。
「やっと・・・、やっと私の大親友と恋バナができる!!」
奈菜は泣きながら言った。
凄く、嬉しかった。私のために、泣いてくれてるなんて・・・嬉しかった。
「で??誰なの??ウチのクラス??」
「うん・・・。」
「名前は??」
「榎本正輝くん・・・。私がプールでいじめられてたところを、助けてくれたの。」
奈菜は、黙って下を向いていた。しかも、小刻みに震えている。
「奈菜??--・・・どうしっ・・・??」
”どうしたの??”が言えなかった。だって奈菜がーー・・・目に大粒の涙を浮かべていたから。
「奈菜!?」
「来ないで!!・・・大っキライ!」
ズキンっ・・・・と、心が傷んだ。
奈菜に言われた一言・・・。
”大っキライ”


私、何かしたのかな??
教えてよ・・・奈菜・・・。

教室に戻ると、クラスの女の子達が一斉に私の方を見た。見たと言うより・・・睨んだと言ったほうがいい。
「皆??奈菜は??」
「あんたって、最低な奴だよねっ!!奈菜が可哀そうだよっ」
ーー・・・え??私、最低??

その日一日、奈菜は姿を現さなかった。
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