Secret Heart
“彼女”という言葉を口にすることはあえてしなかった。
そうすることで、自分から彼女―サキちゃん―の存在を認めてしまうことが怖かったから。
「こいつ?
そーいえば陽菜ちゃんは知らなかったよな。
こいつは、俺の彼女だよ。」
偽りもなく素直にそう言える先輩を見て思い知らされた。
ほんとうに彼女のことが好きなんだと。
そして“彼女”という言葉に、可愛らしく頬を赤らめるサキちゃんも、同様に先輩のことが好きなんだと。
あたしの入る隙はない……
それも痛いほど体に覚えさせられた。
『そう、なんですか。』
…どうしよう
うまく、笑えない。
ちゃんと覚悟して聞いたのに。
鼻の奥がツーンとして、視界がぼやけてくる。