Secret Heart



“彼女”という言葉を口にすることはあえてしなかった。



そうすることで、自分から彼女―サキちゃん―の存在を認めてしまうことが怖かったから。





「こいつ?

そーいえば陽菜ちゃんは知らなかったよな。
こいつは、俺の彼女だよ。」





偽りもなく素直にそう言える先輩を見て思い知らされた。


ほんとうに彼女のことが好きなんだと。



そして“彼女”という言葉に、可愛らしく頬を赤らめるサキちゃんも、同様に先輩のことが好きなんだと。




あたしの入る隙はない……


それも痛いほど体に覚えさせられた。





『そう、なんですか。』




…どうしよう


うまく、笑えない。




ちゃんと覚悟して聞いたのに。

鼻の奥がツーンとして、視界がぼやけてくる。





< 44 / 177 >

この作品をシェア

pagetop