Secret Heart



「陽菜ちゃん?」



あたしの様子がおかしいことに気付いたのか、先輩が心配そうに名前を呼んだ。



今にも溢れそうな涙を堪えているあたしは、その声に応えて上を向くことが出来ない。





お願いです。



もうこれ以上、優しくしないでください…




先輩の優しさはあたしだけに向けられたものじゃないと知った以上


あたしはもう
先輩の優しさを素直に受け止められない。



奥歯を噛み締めて涙を必死に堪え、諦めるように上を向く。





『あたし、今日はもう…帰りますね。』




声が震える…


早くこの場から逃げ出したい。



「え?
待ってる人がいるって…。」



急いで立ち去ろうとするあたしを不思議そうに見る先輩。



これ以上あたしをここにいさせるなんて


先輩は、残酷な人…





『大丈夫です。
もう遅いんで帰りますね。

彼女さん、大事にしてあげてください。……さようなら。』




震える声を押し殺しながらあたしは、先輩に無理矢理作った笑顔を残して、急いでその場をあとにした。





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