天然なあたしは悪MANに恋をする
「おばさん、あたしたち、幼馴染ですよ」

あたしは食べ途中のご飯をレンに差し出した

「は?」

レンが眉間に皺を寄せて、怖い顔であたしを見てきた

「これ、食べていいよ。あたし、もうお腹、いっぱいだから」

あたしは箸だけ持って、席を立った

「ちょ…おいっ」

レンがあたしの手首を掴むと、目を細めていた

「だって、幼馴染なんでしょ?」

あたしは首を傾げると、レンがはっとした顔をした

「ちがっ、あれは…」

レンが説明しようと口を開くが、あたしは手を振ってレンの腕を払った

「だってあたし、レンが何のバイトをしているか知らないし。聞いても教えてくれない。恋人同士なら、そういう隠し事はないよね?」

あたしはレンに背中を向けた

「ミズ…」

あたしはおばさんに「ご馳走様」と告げると、レンの家を出た

一度、家に帰って、歯磨きと洗顔をすると、あたしは鞄を持って駅に向かった

苛々して、つい歩くスピードが速くなる

だってレンって、何も言ってくれないんだもん

聞かないと言ってくれないし、聞いても教えてくれないときもある

それって、どういうこと?

あたしに教える必要がないってことだよね?

つまり、あたしは必要ないなんだよ…レンにとって、あたしの存在価値って低いと思う

あたしにとってのレンはすごく価値のある人

レンがいないと、あたしは生きていけない

けど…レンにとったら、あたしがいなくても生きていけるんだよ

< 103 / 129 >

この作品をシェア

pagetop