天然なあたしは悪MANに恋をする
おばさんが、鼻から勢いよく息を噴射しながら、レンの冷たい性格についてぶつぶつと文句を呟いた

玄関の閉じたドア向こうから、レンのバイクのエンジンが聞こえる

真っ赤なボディに、金色のラインが入ったバイクが、レンのバイクだ

高校生になってすぐに免許を取ると、レンは友人からもらったとバイクを所有した

おばさんはすごく反対してたけど、こうと決めたら意地でも考えを折らないレンに、渋々、おばさんが納得してた

レンのバイク音が遠ざかっていくと、おばさんが「仕方ないわね」とぼそっと吐き出した

「男の子って、高校生にもなると家に寄り付かなくなるのかしらねえ。バイトだあ…何だって何かしら理由をつけて、全然家に帰ってこないのよ。制服を着るだけのために家に帰ってくることもあるんだから。まあ、学校をサボらないだけいいのかしら?」

おばさんは肩をすくめると、さびしそうに微笑んだ

レンってあんまり家に帰ってないんだぁ

ただあたしと顔を合わせないためだけに、バイトに行ってるもんだと思ってたから

あたしの窓から見えるレンの部屋に…レンはどれくらいの時間、過ごしているのだろう?

「ああ、女の子が欲しかったのよ! なのに生まれてきたのは両方とも男の子で…。こうなったらレンとミズちゃんをくっつけて、一日でも早く娘を作ろうとしてるのに! お兄ちゃんったら、わからずやなんだから」

おばさんはブツブツと独り言を言いながら、キッチンに戻って行った

ありがとうございます

こんなあたしを、娘にって思ってくれたおばさんに感謝します

あたしは、おばさんの背中を見つめながら、心の中で頭をさげた

レンはたぶん、あたし以外の人を、おばさんに紹介すると思う

もっと綺麗で、スタイルも良くて、社交性のある人を選ぶはず

あたしの恋は、叶わない

何度も告白しているのに、一度も受け入れてもらえないあたしの恋は、いつか…違う人に向く日が来るのだろうか?

レン以外の男性を好きになる日が、訪れるのだろうか?

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