天然なあたしは悪MANに恋をする
「菅原っ! おせえっ」

あたしより先に教室に入ったレンが、崎先生に怒鳴られる声が廊下に聞こえてきた

「ってーな。ぶつことねえだろ」

「遅れてきて、偉そうにするな」

あたしがそおっと教室のドアから顔を出すと、レンが崎先生の持っている教科書の角で頭を叩かれていた

「理由は!」

「まあ…いろいろ」

レンが叩かれた頭を擦りながら、崎先生から視線をそらした

「あ…妃木、早く席につけ。まだ授業に入ってないから、遅刻じゃない」

崎先生がにっと笑って、ウインクしてくれた

「あ…ありがとうございます」

「いいよ。女の子は準備に時間がかかるからな。ってことで、レンは遅刻な」

「はあ?」

レンが、納得いかないと言わんばかりの返事をした

「当たり前だろ。どうせ寝坊だろ」

「ね…寝坊してねえ」

「じゃ、迷子か?」

「迷子でもねえ…てか、入学して1か月以上過ぎてんのに、迷子になるかよ」

あたしはレンと崎先生の漫才のようなやり取りを聞きながら、自分の席についた

「ねえ、大丈夫? 聞いたよ~、立宮先輩を恨んでる青族が、ミズナを拉致したって」

隣の席の女子が、ひそひそと話しかけてきた

「あ…うん」

あたしは頷く

「やっぱ、立宮先輩が助け出してくれたの?」

「え? あ、ううん」

あたしは首を横に振って、レンの背中を見つめた

先生に怒られているレンが、赤族のチョーで、あたしを助け出してくれた…なんて、きっとクラスのみんなは知らないのだろうなあ…

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