天然なあたしは悪MANに恋をする

「ミズ、教室を飛び出してどうしたんだよ」

背後から、レンの大きな声が聞こえて、あたしは振り返った

「え？　なんでも……」

「あーっ。立宮　景に喧嘩を売った人だぁ！」

満沢さんが、レンの顔を見るなり叫ぶように口にする

あたしの隣に立ったレンが、満沢さんの顔を見て、眉間にしわを寄せた

「ねえねえ、どうして立宮　景に喧嘩を売ったの？　だってあの人、やくざの子供だよ？　後々が怖いとか考えなかったの？　それとも勝てる自信があった？」

満沢さんが、一歩前に出るとレンの腕に絡みついてポンポンと質問を投げかけた

レンは無表情になると、満沢さんとは一切、目を合わさずに、じっと前を見つめた

こ…怖いっ

レンの今、この表情に態勢が怒りを身体に溜めこんでるって感じがして、レンを客観的に見ているこっちがヒヤヒヤする

「ねえ、そもそもなんで喧嘩を売ったのさ」

満沢さんが、ぐいっとレンの腕を引っ張った

「だってさ。立宮　景を敵に回すってことはぁ、学校の生徒たちを敵に回すようなもんじゃん？　ヤバいって思わなかったの？…って、質問に答えてよ」

「答える必要はねえよ」

レンが満沢さんを睨んで答えた

「そんな怖い顔で睨んだって、怖くないしぃ。さあ、質問に答えてよ。めっちゃ、気になるんだよねえ」

「あんたには関係ねえ」

「関係なくても、好奇心はあるんだっ。だから、気になる」

「勝手に想像してれば？」

レンが、満沢さんの腕を振り払うとあたしの手首をがしっと掴んだ

「教室に戻るぞ」

「え？　あ…うん」

あたしは、レンに引っ張られると、教室に戻る廊下を歩き始めた

「何だ、あいつら…。他人に、不躾な質問をポンポンと」

レンが、頬の筋肉をヒクヒクさせながら聞いてきた

「新聞部だって」

「何であんなところにミズが行ったんだよ」

「昨日のことが、記事になって学校中の人たちにバレてるって聞いたから」

「気になったのか？」

「うん。レンのことは書いてなかったよ。大丈夫！」

あたしの言葉にレンが、「ふぅ」っと息を吐き、少し長めの栗色の前髪を掻きあげた

「…てことは、ミズのことは書かれていたってことか？」

「あたしは…別にいいの」