天然なあたしは悪MANに恋をする
あたしはレンの部屋側に面した窓ではなく、もう一つの机の上にある窓を開けた

なんだか、今夜は寝付けそうにない

隣の部屋に帰ってくるであろうレンが、気になってしまう

何時に帰ってきて、何時に寝るのだろうか?

今日のは、本当にバイトだったのだろうか?

急に出かけていく背中を思い出す

べつに服装はいつもと変わらなかったけど、少し膨らんでいた鞄が気になった

鞄の中には何が入ってたの?

着替え…とか?

恋人の部屋に泊まるための荷物が詰められてた?

考えたくないことばかりが、あたしの脳を支配する

レンは、恋人には優しいのだろうか?

会話をして、笑い合って、キスをしたり、手を繋いだりするのかな?

レンの笑った顔なんて、もうしばらく見てないや

窓を開けたまま、「ふう」っと息を吐き出すと、見たことのない赤い車が、レンの家の前で停車した

なんだろ…

あたしはレンの家の前に、静かに停まった赤い車を眺めた

助手席のドアが開くと、無表情のレンが降りてきた

え? レン?

どうして? バイクでバイトに行ったのに、なんで車に乗ってるの?

運転席のドアが勢いよく開くなり、ウエーブのかかった長い髪の女性が素早く降りて、レンに駆け寄った

20代後半の大人びた女性が、レンの身体を支えるように抱きつく

あの人が…もしかしてレンの恋人?

あたしはくるっと身体を回転させると、部屋を飛び出した

階段を駆け下りて、サンダルを足に引っ掛けると、家の外に飛び出した

なんで、そんな行動に出たのか…あたしも自分自身の行動に理解ができない

頭でいろいろと考える前に、あたしの足が勝手に走りだし、そして夜の暗闇に足を踏み入れた

「レン?」

がしゃんと家の門にぶつかるようにあたしは身を乗り出すと、レンと女性に声をかけた

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