天然なあたしは悪MANに恋をする
女性に支えられているレンが、ゆっくりと顔を動かして、あたしの姿を視界に入れてくれた

「レン? どうしたの?」

レンの顔を近くで見て、あたしは驚いた声をあげた

いつも見ているレンの顔とは思えないほど腫れあがっていた

左側の目なんかほとんど開いていない

あたしはもっとレンの近くに行こうと、家の門の鍵を外そうとした

「来んなっ! 馬鹿はさっさと寝ろ」

レンの目が、あたしから離れた

「病院に行かなくて平気?」

「ああ。冷やせば、腫れがひく」

「骨とか…折れてるかもしれないのに。検査に行ったほうがいいって」

「面倒くさい」

「歩くの辛そうだよ?」

「優香が支えるからだろ」

『優香』……って呼び捨て?

レンの彼女なんだね

あたしは二人の仲の良さそうな会話を聞きながら、レンが家の中に入って行くのを見届けた

レンはあんなふうにあたしに話してはくれない

身体に触れることすら許してくれないんだもん

違いすぎるよ

全然、扱いが違いすぎる

これじゃあ、諦めるしか…ないじゃん

「『馬鹿はさっさと寝ろ』…か」

あたしはぼそっと冷たい空気に向かって、言葉を吐き出した

門から手を離すと、あたしはよろよろと家の中に入った

玄関にどかっと尻を落とすと、サンダルを履いたまま、呆然と前を眺めた

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