天然なあたしは悪MANに恋をする
何分、玄関の前に座り込んでいたか…あたしはよく覚えてないけど、背後に人の気配を感じて振り返ると、むすっとした顔をしているレンが立っていた

「レン?」

「寝るなら、ベッドに行って寝ろよ。いくら馬鹿は風邪を引かないって言っても、薄着で座ってたら、熱が出るだろ」

「なんで?」

どうしてあたしの家にいるの?

「窓の鍵が開いてたからに決まってるだろ。ミズが起きてるなら、こっちの家を借りようと思って。夜中にガチャガチャ音をたててると、母親が起きてくるんだよ。こんな顔を見せられねえだろ」

あたしの顔に一気に笑みが広がった

「…ったく。風呂、借りるぞ。それと氷、あるか?」

「うん。お風呂も氷もあるよ」

「ああ? 一戸建てで風呂がなかったら、困るだろ」

「洋服なら…お父さんが置いてったのがあるけど…」

「着替えなら持ってきてる…てか、無くてもすぐ隣なんだから取りに行けるだろ」

レンは小脇に着替えが入っている鞄を抱えて、スタスタと風呂場に向かっていく

あれ?

あたしは首を傾げた

さっきは気付かなかったけど、レンの服が…家を出て行ったときと違う

「レンのバイトって、工事現場?」

「は?」

レンが風呂場のドアを開けると、振り返った

風呂場の脱衣所から明るい光が漏れた

「だってツナギを着てるから」

「あ…ああ、まあ、そんなところだ」

「バイト中に、怪我したの?」

「まあ…な」

レンは曖昧な返事をしながら、脱衣所のドアを閉めた

バイト…だったんだ

恋人のところに遊びに行っただけじゃなくて、バイトもしてきたんだ

< 15 / 129 >

この作品をシェア

pagetop