天然なあたしは悪MANに恋をする
なんか…ちょっと嬉しいな

レンが、頼ってきてくれたのが、すごく嬉しい

あたしは居間の電気をつけると、皮のソファに腰を下ろした

あまり入ることのない部屋にポツンと一人で佇む

静かな家に、風呂場から漏れるシャワーの音にあたしは、心臓がドキドキと早鐘を打った

別に、何があるわけでもない

恋人のいるレンに、あたしをどうこうしようと思う気持ちがあるとは思えない

どうこうしようと思う下心があるなら、告白して何度も振られるはずもないしね

まるで夫婦みたいな時間

好きな人がお風呂から出てくるのを待つって、幸せだね

夢を見ているような気さえしてくる

実はこれは夢で、レンはまだバイトから帰ってないの

ただあたしがベッドの中に見た夢でしかない…あたしのただの願望

「寝なくて平気なのかよ。俺を気にする必要はないんだ。眠いならさっさと寝ろよ」

ソファでウトウトとしていたあたしに、シャワーを浴びて着替えを済ませたレンが声をかけてきた

まただ

レンが、あたしに嬉しい言葉を投げかけてくれた

「ううん、平気。眠くない」

「船漕いでたくせに、なに言ってんだよ」

「だって、レンの顔を冷やさないと」

「んなの、一人でできるんだよ」

「でも、やりたい。レンと一緒に居たいから」

「馬鹿」

あたしがキッチンのほうに歩きだすと、レンがかわりにソファに座った

半袖のTシャツに、ジャージのハーフパンツをはいているレンは、足を広げてソファでくつろぎ始めた

「うん。馬鹿だね…あたしって」

あたしは冷凍庫から氷を出しながら、苦笑した

でも、こうやってレンと過ごせるのがたまらなく嬉しくて、幸せを感じる

やっぱり、あたしはレンが好きなんだ

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