天然なあたしは悪MANに恋をする
レンの彼女さんは、何回レンの風呂上がりのすっきりした顔を見ているのだろう

いいなあ…羨ましいよ

あたしはぬれタオルの中に、ビニールに包まれた氷を入れるとレンの隣に座りながら、腫れいてる左頬にそっと触れた

「痛い?」

「ああ…まあ、腫れてるしな」

レンは濡れタオルを受け取ると、腫れている箇所にあてた

カチカチカチと時計の針の音が聞こえた

あたしは視線を下に落とすと、深呼吸をした

「ごめんね…レン」

「は?」

レンが不思議そうな声をあげて、あたしの顔を見ようと首をひねったのがわかった

「いつも迷惑ばかりかけて」

「あ? なんだよ、急に。この怪我はミズのせいじゃねえだろ」

「ん。高校とか…一緒に居たくないのに、あたしがレンと居たくて、同じ高校に入学したり…何度も告白したり。ほんとにごめん」

レンの首を元の位置に戻る

何も答えず、前を見るレンの気持ちがよくわからなかった

「あたし、レンのこと…諦める」

「は?」

レンの声のトーンが、がくんと落ちた

「ごめんね。本当にごめんなさい。諦めるから、ちゃんとレンじゃない人を好きになるから。だから、嫌わないで。前みたいに、普通に話をしたり…笑いあったりしたいよ」

「…無理だろ。俺ら、もう餓鬼じゃねえし」

「そっか。ごめん」

また時計の針が聞こえてくる

静かすぎる空間に、レンと二人きり

心が苦しいよ

胸が痛い

諦めるって言葉に出して言ったけど、本心は「諦めたくない」って叫んでる

レンに好きなってもらいたいって思ってる

「…っく、ひっく」

あたしはパジャマのズボンを掴むと、涙がぽろぽろと頬を伝っていった

「ごめっ…泣く、つもりは」

しゃくりあげながら、あたしはレンに口を開いた

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