天然なあたしは悪MANに恋をする
「立宮先輩?」

あたしは立宮先輩と目が合った

「最後のクラスにお前がいるなんて…F組から探せば良かったよ」

立宮先輩と目が合ったままで、彼の口が動いている

あたしに話しかけているの?

あたしは驚いて、まわりをキョロキョロと見渡した

他に立宮先輩の知り合いがいるかもしれない

本当はあたしじゃなくて、隣の席の子とか…後ろの席の子に話しかけてて、あたしが勝手に目が合ったと勘違いしているだけかもしれない

まわりを見渡すが、なぜか見る人たちの視線はあたしを見ていた

え? やっぱり…あたしなのかな?

教室の扉に目を戻す瞬間、窓際の席に座っているレンと目が合ったような気がした

なんだか、こっちを睨んでいるような…そんな感じがした

え? レン?

あたしはもう一度、レンの顔を見ようとしたが…その前に、立宮先輩の言葉が飛んできた

「瑞那、お前に話してんだよ」

「あ…あたし?」

がたっと椅子を膝の裏で押しながら、立ちあがった

「瑞那以外に、誰と話せっつうんだよ…て、ああっ! お前ら、ちゃんと金を返したのかよ」

立宮先輩の視線が動いて、セイちゃんとリンちゃんに向いた

「もちろんですよ! ほら…教科書の上に」

セイちゃんが、手を出してあたしの教科書をさした

千円札がひらひらと、教科書の上で揺れていた

「ああ、ならいいや」

納得したように頷くと、ずかずかと1年生の教室に立宮先輩が入ってきた

え? なんで? 

あたしの席に近づいてくる立宮先輩に、あたしは思わず後ずさる

「逃げんなって。なあ、これからさ…どっか遊びに行かね?」

立宮先輩があたしの手首を掴むと、にっこりと笑った

「行かねえ!」

低い声が、先輩の後ろからしてくると、ぱこーんっと良い音で先輩の頭が何かで叩かれた

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