天然なあたしは悪MANに恋をする
あたしはトボトボと歩きながら、改札を出た

9時半すぎに、改札を通るなんて初めてかもしれない

学校の授業が終わって、セイちゃんやリンちゃんとお菓子を食べなければ、すぐに帰ってたし

寄り道しても、地元まで帰って来てから、本屋に行ったり、スーパーに行ったりしてたから

駅の窓から見える外が真っ暗なんて、変な感じがする

あたしは駅構内を歩き、階段を降りはじめるなり、途端に胸が苦しくなった

階段下に立っている人に驚き、そして信じられない現実に、階段を降りている足を止めてしまった

なんで? どうしてレンが立っているの?

レンがズボンに両手を突っ込んで、壁に寄りかかりながら、見上げている

途中で足を止めているあたしの顔を、無表情でじっと見つめていた

レンが壁から背中を離すと「ふう」っと息を吐き出してから、階段をのぼり始めた

レンの長い足が、あたしの足が止まっている階段の2段下で動きを止めた

レンの左瞼が青紫色になってきていて、少し不気味な感じがする

「馬鹿が。電話くらい出ろ」

レンがあたしの鞄を奪うように引っ張った

レンの手に移動したあたしの鞄を、レンが右肩に引っ掛けると、階段を降りはじめた

「あ…ごめっ、うわぁ」

あたしは慌てて階段を降りようとして、段差を踏み外した

レンが肩腕で、落ちてくるあたしを支えてくれると、ぎゅっと両手で抱きしめた

「しっかり前を向いて歩け」

「ごめんなさい」

レンがあたしから離れると、またスタスタと歩いてしまった

レンの背中って大きいね

いつの間に、こんなに大きくなったんだろうねえ

小学校の頃は、あたしのほうが身長があったのにね

今は、レンのほうが全然大きいよ

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