天然なあたしは悪MANに恋をする
「あたし、そんなつもりじゃ…」

あたしは首を左右に振った

「じゃあ、どんなつもりで昨日、あんなことを言ったんだよ。中学のとき、あれだけ酷い苛めにあっても何度も告白してきて、俺さえいればいいって言ってたんだぞ? 高校だって、もっとレベルの高い学校に行けたのに、ミズは俺の成績に合わせて、俺が合格した高校に入学してきた。それが、たった一回、階段から落ちそうになったのを助けた先輩とやらに、告白されたくらいで、俺からヤツに乗り換えかよ」

レンのまっすぐな瞳が、あたしの胸を刺激してくる

忘れようと、胸の奥に閉じ込めようと努力しているレンへの気持ちが、溢れてきそうになる

「の、乗り換えて何がいけないのよっ! あたしだって…あたしだって、辛いんだから」

目頭がどんどんと熱くなっていく

レンに伝えたいいろいろな気持ちが溢れてきて、でも何を言っていいのかわからなくて、言葉にできなくて、それが涙になって頬に伝っていく

「好きって言葉が通じないなら…誰と付き合おうが勝手でしょ! 立宮先輩はすごく優しかった。楽しい時間をあたしに提供してくれる」

レンがむすっとした顔をすると、手に持っているあたしの鞄を投げた

鞄はあたしのお腹に当たって、地面にどさっと落ちる

「ミズの俺に対する気持ちってそんなもんなのかよ。ああ、そうかよ。じゃあ、好きにしろよ。立宮と楽しく過ごせ」

レンがあたしに背を向けると、早足で先に行ってしまった

あっという間にレンの背中は、暗闇に呑まれていく

「どうして怒るの?」

告白すると、迷惑そうに『無理』って断るくせに…

諦めるって言ったら、なんで不機嫌になってあたしを怒鳴るの?

わけがわからないよ

あたしにどうしろって言うの?

あたしはどうしたらいいのよ

あたしは地面に座り込むと、鞄を抱きしめて大声で泣いた



< 36 / 129 >

この作品をシェア

pagetop